概算取得費控除の内容と実態から、正しく利用する術を知る

概算取得費控除とは、売却金額の5%相当額を取得費として譲渡価額から控除できる制度です。取得した当時の契約書や領収書が残っておらず取得費が不明な場合でも、譲渡所得から控除が認められるメリットがある反面、一律に譲渡価額の95%に課税されるデメリットがあります。

取得費が不明な場合、税務署は譲渡価額の5%しか取得費を認めないのが実情のようです。こうした税務署の対応には問題があります。その問題点を概算取得費控除の法的根拠から明らかにします。

取得した当時の契約書や領収書が残っていない場合に、実額控除する方法についても、ご紹介します。

法的根拠

概算取得費控除が認められている法的根拠は、租税特別措置法とその通達にあります。

租税特別措置法では、1952年(昭和27年)12月31日以前から所有していた土地建物を売却したときの取得費は、所得税法の規定にかかわらず、収入金額(売却金額)の5%相当額とすると定められています。

ただし、実際に計算した取得費の額(実額)が、概算取得費を上回ることを証明できる場合は、実額を取得費とするとされています。

租税特別措置法

第34条の4(長期譲渡所得の概算取得費控除)第1項

個人が昭和27年12月31日以前から引き続き所有していた土地等又は建物等を譲渡した場合における長期譲渡所得の金額の計算上収入金額から控除する取得費は、所得税法第38条及び第61条の規定にかかわらず、当該収入金額の100分の5に相当する金額とする。ただし、当該金額がそれぞれ次の各号に掲げる金額に満たないことが証明された場合には、当該各号に掲げる金額とする。

取得に要した金額と改良費の額との合計額

取得に要した金額と設備費及び改良費の額との合計額につき所得税法第38条第2項の規定を適用した場合に同項の規定により取得費とされる金額

ここで所得税法の規定にかかわらずとされています。所得税法ではどうなっているかというと、実額控除が原則です。

一般法よりも特別法が優先されますから、この特別措置法により、1952年以前から所有している土地建物を売却した場合は、概算取得費控除が法律上の原則となります。実額が概算取得費を上回ることを証明できれば、実額控除が認められる仕組みです。

1953年(昭和28年)1月1日以降に取得した土地建物についても、国税庁の通達で、租税特別措置法に規定した概算取得費控除に準じて計算してもよいとされています。

租税特別措置法通達31の4-1

昭和28年以後に取得した資産についての適用

措置法第31条の4第1項の規定は、昭和27年12月31日以前から引き続き所有していた土地建物等の譲渡所得の金額の計算につき適用されるのであるが、昭和28年1月1日以後に取得した土地建物等の取得費についても、同項の規定に準じて計算して差し支えないものとする。

この通達により、取得した時期にかかわりなく、長期譲渡所得(所有期間が5年超の土地建物を売却したときの譲渡所得)については、概算取得費控除が適用されることになっています。

税務署の対応

問題は、税務署がこの通達を根拠に、1953年以降に取得した土地建物を売却した場合にも、譲渡価格の5%しか取得費を認めない実態があることです。

通達は、法令の解釈や運用上の問題で税務署に通知した内部文書にすぎません。国民・納税者を縛る法律とは違います。また、この通達の解釈・運用も誤っています。

法令上、1953年以降に取得した土地建物については、所得税法の規定が原則となります。

つまり、1953年以降に取得した土地建物については、法律上、実額控除が原則です。概算取得費控除を選択するかどうかは、納税者の自由です。納税者が概算取得費控除の適用を希望する場合には、それで差支えないというのが正当な解釈です。

概算取得費控除の位置づけ

概算取得費控除が法律上の原則とされているのは、1952年以前から所有している土地建物。
1953年以降に取得した土地建物の長期譲渡所得については、実額控除が法律上の原則。概算取得費控除を選択するかどうかは納税者の自由。

実額控除にするには

契約書・領収書がなくても、実際の取得価額を証明できるものがあれば、実額で計算することができます。

例えば、次のような証明書類を用意して、取得時の状況説明を書いた書面といっしょに確定申告書に添付するのも1つの方法です。

  • 購入代金の支払いが分かる通帳
  • 住宅ローンの契約書コピーや償還表
  • 住宅ローン返済の通帳
  • 購入当時の価格が記載されているパンフレットなど

こういった証明書類がなくても、取得時期が分かれば、着工建築物構造別単価や市街地価格指数といった統計データを用いて、建物や土地の取得費を算定することができます。

これは、税務署も市場価格を反映した近似値の取得費が計算でき合理的と認めている方法です。

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